プログラム
(登壇者のスライドは、タイトルをクリックするとご覧いただけます)
時 間 | 内 容 |
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○オープニング |
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14:00~14:05 |
開会挨拶 水本 哲弥 理事・副学長(教育担当) |
14:05~14:08 |
井村 順一 |
14:08~14:15 |
LPG事業の5年間の経緯(スライド5枚目〜13枚目) 大石 哲也 |
○第1幕:話題提供 |
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14:15~15:15 |
東京工業大学の学修管理システム・実践の紹介(スライド14枚目〜27枚目) 仲谷 佳恵 |
杉森 公一 氏 |
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淺田 義和 氏 |
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LAに基づく教員・学生の活動支援〜主体的な学びの実現に向けて〜 島田 敬士 氏 |
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殷 成久 氏 |
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15:15~15:20 |
休憩 |
○第2幕:パネルディスカッション・質疑応答 主体的な学びの支援を可能にするオンライン学修管理システムのあるべき姿とは |
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15:20~15:55 |
モデレーター 室田 真男 岡田 佐織 |
○クロージング |
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15:55~16:00 |
閉会挨拶 室田 真男 |
開催レポート
教育革新センターでは、「学生が自ら進んで学べるプラットフォームの構築による教育改革のさらなる推進」という事業(以下LPG事業)を2017年から推進し、オープンソースのムードル(Moodle)を元にした学修管理システム(Leaerning Management System、 以下LMS)「ティーツースカラ(T2SCHOLA)」の開発を開始し、自ら学ぶ学修者を支援するという設計思想に基づく機能の開発も同時に進めてきました。本事業は今年が最終年度であることから、その事業内容のご報告に加えて、「主体的な学びの支援」においてオンライン学修環境が今後どうあるべきかを考えるべく、本シンポジウムの開催に至りました。
本シンポジウムは、2021年9月17日(金)に「オンライン学修環境シンポジウム-主体的な学びの支援を可能にする学修管理システムの未来-」というタイトルで開催しました。学内外から参加者を募り、オンライン(Zoomウェビナー)による開催で、112名の参加を得ることができました。
シンポジウム冒頭、当日出席が叶わなかった水本理事・副学長(教育担当)よりビデオにて開会挨拶がありました。続けて井村センター長より本シンポジウムの趣旨説明がありました。また、情報活用IR室の大石特任准教授からは、本LPG事業の5年間の経緯の説明がありました。まず、LPG事業が目標としていた「自ら学ぶ学修者を支援する」という設計思想と、それに基づく機能の内容が紹介されました。そして、この開発途中に発生したコロナ禍によって学修管理システムの需要が急激に高まったこと、こうした状況に対応するために、T2SCHOLAは全学的に前倒しでの導入が決定されたことの説明がありました。そして、こうした背景により、現在は、全学での安定的な運用のために注力している状況であるものの、今後は、「主体的な学びの支援」も視野に入れながら、オンライン学修環境のさらなる充実化を図っていく必要があることが示されました。
第1幕では、「主体的な学び」をオンライン学修環境も含めて成立させるためにどの様な工夫が各大学で現在行われているか、LMS、FD(ファカルティ・デベロップメント)、 LA(学習分析)といった観点から話題提供を行いました。本学からは、仲谷特任講師より、T2SCHOLAの主な機能や、現在の利活用の事例と今後の取り組みについての説明がありました。資料配布や課題提出、掲示板等の基本的な機能に加え、モバイルアプリで画面遷移無しに動画が視聴できる機能やその動画視聴ログの可視化機能、レポート相互評価の機能等とその活用事例が紹介されました。
他大学の取り組みとして、まず、杉森 公一 氏(北陸大学・高等教育推進センター・教授)からは、教育法の開発や教員支援について触れながら、主体的な学びの場を形成するためのFDの役割に関するお話をいただきました。これまで杉森先生が実施されてきた学修環境の整備に関するお話に加え、学修環境にテクノロジが入ってきたことによる教育技法の変化についてご説明いただきました。さらに、「主体性」そのものの捉え方や、学生の主体性を支えるための教員の主体性のあり方、そこに関わるLMSやLAへの問いを投げかけていただきました。
淺田 義和 氏(自治医科大学・医学教育センター・准教授)からは、「大学教育におけるMoodleの現在・今後の活用について」というテーマで話題提供いただきました。 Moodleで提供できる学習活動について、SAMRモデル(ICTが教授・学習方略に与える影響の尺度を示したもの)を元に整理いただきました。そして、Moodleの今後の活用について、SAMRモデルの特にM(変容)やR(再定義)に焦点を当てながら、フォーラムや脱出ゲームを活用した事例なども取り上げながらお示し頂き、学びを止めないためのツールから学びの改善のためのツールとしてのLMSの方向性を示していただきました。
島田 敬士 氏(九州大学・システム情報科学研究院・教授)からは、LAの機能を有する統合学修環境の概要と活用事例について、教員と学修者双方の視点からご紹介いただきました。具体的な事例としては、授業中、資料に学生がマーカーやメモの付与などのアクションを行い、それをリアルタイムにヒートマップ等で教員へ可視化する機能や、学修者が学修したキーワードからマップを作成する機能などをご紹介いただきました。こうした機能を活用し、教員が学生の理解度に応じて授業設計を再検討したり、学生が他者の学修内容を自身の学修活動に取り入れたりすることで、教授・学修の改善につながっていく事例をお示しいただきました。
殷 成久 氏(神戸大学・情報基盤センター・准教授)からは神戸大学で開始された教育データ活用の仕組みについて話題提供をいただきました。まず、神戸大で実際に用いられている学修管理システムBEEF、また、神戸大学におけるオンラインを活用した学修環境における課題についての説明がありました。そして、それを受けて開始されたDX推進プロジェクトにおいて、これらの課題解決に向けた計画についてご紹介いただきました。例えば、電子化された教材と学修者の学修中の行動データを収集する仕組みを元に学修者の学修状況を把握するシステムの導入や、実習をオンラインで実施する場合の臨場感を高めるための機能の開発等について、取り上げていただきました。
続く第2幕(パネルディスカッション・質疑応答)では、室田真男 氏(東京工業大学教育革新センター・リベラルアーツ研究教育院・教授)と、岡田佐織 氏(東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院・准教授)がモデレータとなり、「主体的な学びの支援を可能にするオンライン学修管理環境の今後について」というテーマでパネルディスカッションを行いました。
まず室田教授から「teaching with technology、 learning with technologyを実現するための知見」について質問がありました。杉森先生からは、学生の学びを支えるための「学修目標に準じた活動の設計」を考えていく教員同士のコミュニティの重要性についてコメントが有りました。淺田先生からも、学修活動をオンラインに代替するところを超えて、授業を再設計にする段階においては、専門を教える教員や学修環境を設計する専門家とのネットワークが重要になっていくだろうとのコメントが有りました。
続けて、参加者より、他者の学びを参考に自身の学びを変えていくための様々な機能を提供していく中で、そうした機能を使ったことによる効果の検証や、学生の変化について質問がありました。島田先生からは、他者の活動をリアルタイムで閲覧することによる学びの持続性や活発化についてはデータから判明してきていること、より詳細な効果については、授業内外の学びについて学生へのインタビューなどを実施している最中であることのコメントが有りました。殷先生からのコメントでは、学生の学修行動を教員や学生にフィードバックすることで教授・学修の方略に変化が生じたことが示唆されました。
岡田准教授からは、LAのシステムが教材や授業設計へ与える影響の期待と,そうしたシステムをより効果的に使っていくための教材や授業設計の疑問についてコメントが有りました。島田先生からは、LAのシステムに合わせて教材や授業設計を変えるのではなく、目的に応じてより効果的に使ってもらうためのシステムの改善についての展望や、システムに合った授業の内容についてのコメントが有りました。さらに、科目(学年)をまたいだ使い方については、淺田先生や杉森先生から技術的な解決方法についてのコメントが有りました。
閉会に際しては、登壇いただいた先生方から一言ずつ感想をいただきました。また、室田教授より、オンライン環境の今後のあり方や支援システムについて、学びを支える人同士のコミュニティで考え続けていくことの重要性に触れながら閉会挨拶があり、シンポジウムは盛会のうちに終了しました。
シンポジウム終了後のアンケート(53名/回収率50.0%)では、参加者の満足度は「満足」あるいは「やや満足」を選択した参加者が88.4%と概ね高く、「学修管理システムが今後主体的な学びを支援できそうだと思った」では81.1%、「学修管理システムの利活用について新しい観点を得られた」では69.2%の回答者が「とてもそう思った」「そう思った」を選択していたことから、本シンポジウムが今後の学修管理システムの利用について参加者の方々が前向きな検討を行うためのきっかけを提供できたことが示唆されました。
また、自由記述では、「授業設計はじめ、教育を良くするために活かせるかどうか、全教員が考えていく必要があると思います。」「学習分析は学習の質向上に重要なツールとなるため、まずは教員その後は学生も効果的に活用できる環境を広げる必要があると感じました」「教授者も学習する姿勢が大切と感じました」等の感想が寄せられました。
お問い合わせ
東京工業大学 教育革新センター LPGシンポジウム担当
TEL:03-5734-2993
E-mail:citl_lpg_sympo2021[at]citl.titech.ac.jp ( [at] を @ に置き換えてください)
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