CITL-TokyoTech

Logo Center for Innovative Teaching and Learning, Tokyo Institute of Technology
JP
EN

NEWS

教育の質向上を目指して全学FD2023「どうする!激変する大学教育環境 -D&Iと生成系AI-」を実施

東京工業大学は教育本部の主催,教育革新センターの企画・運営により,教員向けの研修である全学FD2023*「どうする!激変する大学教育環境 -D&Iと生成系AI-」が,11月27日から28日の2日間にわたり開催されました。

* FDは,Faculty Development(ファカルティ・ディベロップメント)の略称で,教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組みの総称。

グローバル化の進展,ならびにICTの進化により社会が大きく変化する中で,大学も来たるべき社会で活躍できる人材の育成が求められています。本学が2016 年度に開始した教育改革は大きな成果を上げつつありますが,教育改革の目標である「学生が自ら学び考える教育」をまさに体現する研究室教育においても,D&I (Diversity and inclusion)に対応していくことが必要です。また,ChatGPTに代表される生成系AIを用いた情報システムは,大学教育に対して正負の両面で大きなインパクトを与える可能性があります。

今回の全学FDでは,「多様な学生を育む研究室」と「大学教育における生成系AIの光と影」という二つのテーマを取り上げました。研究室での活動に関して,D&Iなどの学生への対応の問題や各教員が行っている運営上の工夫を共有することにより,研究室教育を深めていくための方向性を探りました。また,生成系AI に関して,今後,大学がどのように対応するべきか,多分野にわたる教員が膝を交えて議論し,教育の質向上を目指しました。

新型コロナウイルス感染症拡大に配慮し,2020年と2021年はオンライン開催, 2022年は半日の対面方式による学内での開催でしたが,今年は対面方式による学外の研修所で宿泊型での開催とし,全学から教員40名が参加しました。また,当日は,益一哉学長,小倉康嗣監事,井村順一理事・副学長(教育担当),及び桑田薫 理事・副学長(ダイバーシティ推進担当)がオブザーバーとして参加しました。本研修は,教育革新センター(以下、CITL)および全学教育推進室は,企画段階から実施運営まで担当しました。

1日目(27日)は,開会とFDの概要説明,神田学CITLセンター長からの挨拶の後,Cross教授より「Educating students to “think-like-an-engineer” in a diverse international student lab.」,畠山准教授より「高等教育における生成系AIへの対応と活用の可能性」というタイトルで2つのテーマについて話題提供がありました。続くグループ討論1において,参加教員が「多様な学生を育む研究室」(テーマA)と「大学教育における生成系AIの光と影」(テーマB)というテーマごとに,8グループ(A1~A4,B1~B4)に分かれ,グループ発表会に向けて,テーマに関する課題などの論点を整理しながら,各教員がどのような工夫をしているか情報共有し,解決のために大学や各教員は何をすべきかについて活発に話し合いました。

グループ討論1

グループ発表会では参加者全員が集まりグループごとに発表し,質疑討論を行いました。テーマA(多様な学生を育む研究室)では「ルール・マニュアル化,ミッションの明文化」,「女性のロールモデルの提示」,「性差を考慮した指導の必要性の有無」等,研究室を運営する上での工夫が共有されました。一方,テーマBでは「生成系AIに対応した評価方法の必要性」,「AIについての教育や,倫理教育の拡充」,「全教員にサブスクリプションを与える必要性」等についての話し合いの結果の発表と質疑応答がありました。

グループ発表の様子

グループ発表会の後は,各グループでそれぞれのテーマに関する発表内容を振り返り,議論を深化させました。

1日目のFDプログラムのまとめとして,益学長,小倉監事,井村理事・副学長,及び桑田理事・副学長からコメントを頂きました。益学長からは「大学のブランディング」,「総合型選抜に関する誤解」,「アンコンシャスバイアスの根深さ」,「生成系AIの先進的な利用」,「生成系AI自体の開発研究」,小倉監事からは「校内の夜の暗さなどの安全性の問題の解決」,「生成系AIの利用は自明でそれを前提とした対処」,桑田理事・副学長からは「世界レベルのD&Iの考え方を持った学生の育成」,「そのための親の考え方の変革」,井村理事・副学長からは「学部学生に影響力が強い学部3年に対するD&Iの教育」,「進化を続ける生成系AIへの未来を考えた対応」に関してのコメントがありました。

その後,全員で夕食をとり,参加希望者による懇親会を開催しました。

2日目(28日)は朝から昨日のグループ活動の振り返りに関して全体討論を行いました。振り返りの発表の後,ペアグループ(違うテーマで同じ番号のグループ)より質問・コメントを受け付け,その後にフロアからの質問を受けました。いずれのグループの発表においても,発表グループとフロアとで,積極的な議論が交わされました。テーマAでは,「研究室間の交流が必要であること」,「多様な学生を受け入れるために受験科目を増やすこと」,「小学生,中学生の時の親や社会の雰囲気の改善」等,テーマBでは,「教員も含めたeラーニングの拡充」,「学内コンテストをさらに展開」,「生成AIの無料版,課金版,エンタープライズ版の違い」等が話題になっていました。

全体討論の様子

最後に,益学長と小倉監事より閉会の挨拶がありました。益一哉学長からは「多くの教員と話すことができて,東工大の教員の多様性を改めて認識した」,「一人研究室の問題の解決を目指している」,小倉康嗣監事からは「多様な学院の人と話せることを大切にする」,「長い人生の中では大学の成績よりやる気の方が大切であり,ChatGPTを使いこなせる人間力の育成が重要」というお言葉を頂きました。

全学FD2023参加者

1日目(27日)のプログラム

時間 スケジュール 内容
13:00-13:05 開会・説明
13:05-13:10 挨拶 神田副学長(教育運営担当)
13:10-13:25 話題提供A 講演者:Cross教授
タイトル:Educating students to “think-like-an-engineer” in a diverse international student lab.
13:25-13:40 話題提供B 講演者:畠山准教授
タイトル:高等教育における生成系AIへの対応と活用の可能性
13:40-15:10 グループ討論 テーマA:多様な学生を育む研究室
テーマB:大学教育における生成系AIの光と影
15:25-17:05 グループ発表 1グループあたり10分程度(発表時間5分,質疑応答4分,交代時間1分)で発表
17:05-17:10 集合写真
17:20-17:50 グループ討論 各グループで発表を聴いた後の振り返りを行う
17:50-18:10 コメント 益学長,小倉監事,桑田理事・副学長,井村理事・副学長が
1日目の活動に対してコメント
18:30-19:15 夕食
20:00-21:00 懇親会

2日目(28日)のプログラム

時間 スケジュール 内容
9:00-10:00 全体討論 1. 各グループが振り返り結果を発表
2. ペアグループのメンバーが質問・コメント
3. フロアの参加者が質問・コメント
10:10-10:40 講演 講演者:齋藤教授・高田准教授
タイトル:キャンパスを彩る多様性と研究室という小宇宙
10:40-11:00 挨拶 益学長,小倉監事
11:00-11:10 閉会 司会

全プログラムを終えて行ったアンケート(37名/回収率92.5%)では,参加教員の満足度は「そう思う」と「ややそう思う」を合わせて94.6%と非常に高く,特にグループ討論と齋藤教授,高田准教授による講演が有益と感じられたことが分かりました。また,自由記述では,今後の全学FDのテーマとして「大学教員の存続意義」,「ブランディング」,「TA 教育」,「大学の国際競争」を議論すると良いとの意見が寄せられました。